工場の改善活動の種類には
①経営トップの方針から展開される「経営課題」の改善活動
②部門ごとの方針から展開される「業務課題」の改善活動
③職場ごとに日常発生する課題、問題の改善活動
いわゆるボトムアップの小集団活動と呼ばれているのは③の改善活動です。①②は、トップ層、管理層が行うべき改善活動です。しかしながら、①②の改善活動も小集団のQCサークル活動として定義する企業もあります。
「不良を減らしたい」「生産性を向上させたい」「新技術を導入したい」「職場の活性化を図りたい」など、それぞれの目的に応じて、どのようなレベルの改善活動が適しているのかのかよく考える必要があります。
職場の小集団が、それぞれ自由にテーマを設定して行う活動は、効果を期待するより、職場内のコミュニケーションを良くし協力し合って仕事を進める効果は期待できます。しかし、会社全体としてQCDの効果を得るには、部門間、工程間、あるいは全社同一テーマで取組む必要があるのです。ボトムアップ活動による職場の一部分の範囲の最適化では、利益や売り上げ増につながらないことは明らかで、工場全体の生産性を高める全体最適化を目指した活動が今求められています。
そこで小集団活動では、どの範囲の問題を扱うのか?を明確に決める必要があります。
かつては、職場の身近な課題を解決するのが、QCサークル活動と定義付けられていました。しかし、大きく環境が変化した今の時代、この活動だけでは企業は成長しません。もっと活動範囲を広げ、部分最適から全体最適のカイゼンが求められるようになり、関係部門メンバーによるプロジェクト活動が主流となってきました。全社5S活動、JITカイゼン活動、TPM活動、あるいは生産リードタイム短縮などの活動が該当します。
また現在では、IOT導入による機械の稼働監視、ロボット導入など、スマートファクトリー化に向けた活動も求められてきました。
QCストーリーによる改善は、もうおなじみの手順ですが、改善活動は必ずしもこの通り進みません。その理由は、難しい問題は、必ずと言っていいほど一度で解決することはなく、試行錯誤の繰り返しとなるからです。 QCストーリーは、解決の手順を分かり易くまとめ、記録したり報告するためのものであり、活動の経過や実績を示しているものではありません。
それを無理やり体裁を整えようと時間を浪費するのは本末転倒と言わざるを得ません。毎日生産に追われ、納期問題、人的ミスの発生、設計変更など日常の処理を行う中でさまざまな要因で、思うように生産性が上がらない、むしろ下がっていくなど、難しい問題が山積みとなっています。
このような工場の問題を解決するには、プロジェクト組織を結成して各部署からメンバーを選んで改善活動を進めます。
・慢性不良の撲滅
・付加価値生産性向上
・リードタイム短縮
・省人化
これらの活動は、トップのリーダーシップにより推進するものであり、小集団に丸投げしただけでは解決しません。そうすると、小集団によるQCサークル活動に何を期待したらいいでしょうか?
生産活動に直接携わっているのは現場のスタッフ(小集団)であり、現場の実態を一番詳しく把握しています。しかし、小集団だけでは解決できない問題も多く発生します。 そこで、小集団によるQCサークル活動の役割として
①日常作業のなかで発生した問題を捉えて解決を図る
②小集団で解決できない共通の課題、工場全体の課題を提起する
です。問題の提起を受けた管理層はすぐさまフォローし、解決に向けての方策を講じます。共通の課題、工場全体の課題の取り組みは、テーマがはっきりしているので、プロジェクトチームを組んで計画的に課題解決を図って行きます。このような、プロジェクト活動をQCサークル活動として行っている企業も見受けられますが、これには、工場のトップ、管理層の支援、フォローがしっかりとなされていることが条件となります。
このような支援、フォロー体制がないまま、小集団だけに活動を任せきりにしていることが、QCサークル活動の衰退につながっているのです。
何といっても、毎日の生産で問題が発生しないように、事前に手を打つことが重要です。
・4Mの変化を見える化して事前に問題が発生しないように手を打つこと
・管理ルール(手順書やチェックシート)の不備を見つけ是正すること
・新人のOJTを進めること
小集団による日常の業務における改善活動の原点はここにあります。
「問題発生~処置~試行~うまくいかなければ他の処置を行う」というようなことを日常、自主的に行われ、改善を繰り返していく活動が「品質管理」の本来の姿です。これは、現場のスタッフ、管理層、トップそして直接部門、間接部門を問わず実施されるのが「TQM」なのです。
さあ、あなたの会社の改善活動はどのような形で行われているでしょうか?一部の人だけの活動では決して効果は得られません。
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