熟練技能の継承

熟練技能者の作業を分析すると90%以上は繰り返し作業+選択作業であることが分かります。

 ・熟練設計者にしか検討できない工程を「判断」工程とする

 ・簡単な選択肢を与えれば非熟練者でも判断できる工程を「選択的判断」工程とする

 ・毎回同じロジックで行っている工程を「作業」工程とする

「作業」工程は、機械化などのシステム化により自動化可能かどうかを検討します。


1.ノウハウ(暗黙知)とは

学校や本で学んだ知識が、仕事における業績にすぐに結びつかないのはなぜだろうか?それは、ノウハウという、経験を通してでしか学ぶことのできない知識や技能がなければ仕事をうまく進めることができないからです。ノウハウは、言葉で表現することが難しく、手順の形で示されていない知識のことです。とくに、最近の仕事は、複雑で非定型的なものになりつつあるため決まり切った仕事を忠実にこなすだけでなく、環境の変化にうまく適応して仕事をこなしていくことが求められています。

マニュアル化が可能な作業

 ①繰り返し型作業・・・決まった手順で行う作業

 ②選択型作業・・・いくつかの種類モノや情報を選ぶ、または組み合わせる作業

マニュアル化が難しい作業

 ①磨き抜かれた感覚や、技能により作り上げられる技術工芸品、芸術的表現

 ②深い経験や知識を基に、新たなモノや仕組み、アイデアを生み出す仕事


2.ノウハウはどのように獲得されるのか

仕事で役に立つ知識や技能は、現場での経験から学習するものです。仕事の上で、一人前、さらに熟練者になるためには十年程度の長い時間を必要とすることもあります。職場では、研修よりも実際の仕事の経験から知識や技能の獲得を求められています。とくに、経営環境の変化や技術革新が急速に進む現在においては、難しい仕事に取り組む挑戦性や、仕事の変化に応じた適応力と柔軟性が求められています。


3.必要なノウハウ・マネジメント 

一般の企業では、人材育成のために、業務遂行の手順や技術、知識を学ばせることが多いでしょう。これらの手順や技術の中にも、先人が生み出したノウハウは含まれています。しかし、その量は少なく、またノウハウとして整理されていません。もちろん一般企業の中にも、多くのノウハウを持った、秀でた人材はいます。しかし彼らは、自分がどのようなノウハウを持っているか、自覚していないことがあります。

ましてや部下に、箸の上げ下ろしではなくノウハウを直接指導したり、仲間と日々、ノウハウを共有・拡充することは行っていません。つまり、ノウハウはマネジメントされていないのです。

(1)技能者のノウハウの見える化

スピードが格段に速まった現代では、ベテラン技術者のノウハウや経験を見えるようにし、従来なら20年かかっていたものを3~5年でマスターさせ、やる気のある技術者のレベルアップを加速させる必要があります。それには徹底した熟練技能者の作業の動きと若手技能者との作業の差異を分析し若手作業者の陥りやすい作業を指摘、修正していくように教育します。

 ①作業の差異分析・・・ビデオ撮影、目視による作業分析

  熟練者 VS 若手:相違点を抽出

  熟練者 VS 熟練者:共通点を抽出

 ②作業のポイント集

  a.熟練と若手の作用の相違点を抽出、可視化して比較対比する

  b.言葉で表現できないカン・コツ作業を掴み、可視化して比較対比する

  c.a,bを編集し作業を標準化し、また言語の壁をなくし、海外労働者にも共有する 

  d.習熟度を定期的に測定する

 (2)技術者の思考回路の見える化

ノウハウは企業にとって重要な「無形資産」です。しかし無形であるためにその共有や継承には困難が伴います。「ノウハウの見える化」で心掛けるべきは、問題解決の「答え」を追求することではなく、答えを導き出すための「考えるヒント」を見えるようにすることです。その際に鍵となるのが、ベテラン技術者の考えた解決策や結果ではなく、ベテラン技術者の思考回路を解析し、考える道筋を「見える化」することなのです。

単なる知識の詰め込みではなく、生きた知恵の伝承が求められています。当研究所で公開しているノウハウとして以下のものがあります。 単なる知識ではなく、考える道筋を「見える化」したもので、比較的経験の浅い技術者でも、ベテラン技術者と同等に品質問題を解決できるように準備されています。


4.ノウハウ・マネジメントの仕組み

企業にとって継承が必要と思われるノウハウを抽出し、それらを継続的に活用しレベルアップし企業の強みとして差別化するために、体系的な管理を行っていく必要があります。それには、上記3項で述べたような「技能者のノウハウの見える化」「技術者の思考回路の見える化」を進めていく必要が あります。伝承が必要と思われるノウハウをリストアップし、見える化するためにはどのような手段を行うのかを検討していく必要があります。

 技能の見える化・・・動画・写真を多用したマニュアル

 考える道筋の見える化・・・フローチャート、マニュアル化、フォーマット化、トラブルシューティング表 

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