中小企業の悩みといえば・・・、「売上が立たない」というもの。継続的に売上を上げ続けるのはとても大変なことで、どんな会社でも「どうやって売上をあげていくか?」ということには日々頭を悩ませています。
実際は、売上を上げればいいということではなく、利益がきちんと出る商品サービスでなければ意味がありません。利益を継続的に確保するためにも、“経営戦略”が大切になります。ただ、経営戦略は取っつきにくく分かりにくく目には見えないものなのでどうしても避けてしまいがちなのです。
ここで、ありがちな問題について指摘します。
「1位が総取り」もしくは「1位以外はすべてビリ」の時代に、オンリーワンではなく、シェアナンバーワンになるための戦略ーーそれが「ランチェスター戦略」です。 現役経営者であり、全国の中小企業750社超のコンサルティングを行う著者が自社で導入し、会員企業にも指導している「ランチェスター戦略」を初めて体系的に解説。 営業・販売・サービスだけでなく、採用や人事、ネット戦略等への応用の仕方も紹介。
【1】資金・財務ばかりに注力してしまう
経営戦略というと「資金調達」「財務分析」といった解説に行き当たります。もちろん、それらは大切なことではありますが、経営戦略の一部に過ぎません。むしろ、優先順位としては低いです。資金がたくさんあっても、戦略が稚拙であればどんどん資金を消費してしまいます。倒産してしまうこともあります。資金は商品開発や広告宣伝、人を雇うために必須ではありますが、それがあるからといって上手くいくわけではありません。
むしろ「最初は資金がたくさんないほうがイイ、小資本が良い」と言われています。なぜなら、最初から資金がたくさんあると、頭をふりしぼって考えなくなるからです。とりあえず、お金で解決しようとするからです。アイデアは追い込まれたときに煮こまれていく気がします。
【2】意味が広いため曖昧になっている
戦略とは、もともとが軍事用語から来ているため、定義がとてもぼやっとしています。実は、「経営戦略」と名のもので、「経営戦術」のケースがとても多いのです。例えば“マーケティング戦略”といってる人の9割以上は、マーケ ティング戦術の話をしています。戦略と戦術の違いがわからなくなってしまっているのです。
【3】小が大に勝つランチェスター3原則
ランチェスターの法則は、イギリス人の航空工学の研究者F.W.ランチェスター(1868〜1946)が第一次世界大戦のとき提唱した「戦闘の法則」で、兵隊や戦闘機や戦車などの兵力数と武器の性能が戦闘力を決定づけるというものです。
第一法則(一騎討ち戦、局地戦、接近戦)……戦闘力=武器効率×兵力数
第二法則(確率戦、広域戦、遠隔戦)……戦闘力=武器効率×兵力数の2乗
この二つの軍事法則から勝ち方の原則を導きだせます。まず兵力数が多い軍は常に有利です。特に第二法則が適用する戦いでは兵力数が2乗に作用しますから、圧倒的に有利です。では、小が大に勝つにはどうすればよいでしょうか。
第二法則適用下の戦いでは歯が立ちません。第一法則適用下であれば、武器効率を兵力の比以上に高めれば勝てます。兵力数は増やせませんが、運用方法には工夫の余地があります。局地戦に持ち込み、兵力を集中させれば、その局面においては兵力数をライバルよりも多くできます。軍事用語で局所優勢といいます。局所優勢の状況を維持して各個撃破していくのです。
つまり、ランチェスター法則から導き出される小が大に勝つ原則は以下の3つです。
①奇襲の原則 ランチェスター第一法則の一騎討ち戦、局地戦、接近戦といったゲリラ戦で戦う
②武器の原則 武器効率を兵力比以上に高める
③集中の原則 局所優勢となるよう兵力を集中し、各個撃破する
【4】ランチェスター法則をビジネスに応用する
軍事理論のランチェスター法則を企業間競争に応用します。戦闘力を、顧客を開拓し売上を上げ利益を確保する「営業力」と置き換えます。
第一法則(一騎討ち戦、局地戦、接近戦)……営業力=武器効率×兵力数
第二法則(確率戦、広域戦、遠隔戦)……営業力=武器効率×兵力数の2乗
まず、大きく捉えるなら武器は商品力、兵力は販売力です。 細かくは、情報力、技術開発力、品質や性能、ブランドなどの製品の付加価値顧客対応力、営業パーソンのスキルなどの質的経営資源が武器です。
社員数、営業パーソン数、販売代理店の当社担当者数、製造現場の設備機器数売り場面積、席数など、量的経営資源が兵力です。これら質的経営資源と量的経営資源を掛け合わせたものが企業の営業力を決定づけます。
では戦闘における第一、第二の法則はビジネスにどう応用できるでしょうか。大きく捉えるなら、特定の商品、地域、販路、顧客層、顧客といった部分的な競争なら第一法則が適用し、総合的・全体的な競争なら第二法則が適用します。総合的・全体的な競争の場合、量的経営資源が2乗のパワーとなることを意味します。
量的経営資源の乏しい(小さい会社、業界二番手以下の会社)は、部分的な競争に持ち込まなければ勝ち目はないということです。
【5】弱者の基本戦略は「差別化戦略」
ランチェスター法則が示す小が大に勝つ三つの原則から弱者の戦略が導き出されました。弱者の基本戦略は「差別化戦略」です。武器効率を高めることです。差別化とは商品をはじめ、会社、人材、情報、サービスの質的な独自性、優位性です。兵力を集中することを「一点集中主義」といいます。重点や集中という言葉も、一般によく使われていますが、ランチェスター戦略の場合は、兵力数の優位性から導かれています。
つまり、量的な優位性を築くために、自社の経営資源を重点配分することが勘所(かんどころ)です。このほか第一法則的な部分的な戦い方「局地戦(地域や領域の限定)」「接近戦(顧客に接近する販売経路、営業活動、顧客志向)」「一騎討ち戦(競合数の少ない競争)」「陽動戦(奇襲戦法)」が弱者の戦略です。
一方、兵力数の多い企業は第二法則的な総合的な戦いを行えば、圧勝できることから強者の戦略が導き出されました。強者の基本戦略を「ミート戦略」といいます。弱者の差別化戦略を封じ込める意味です。同質化競争に持ち込めば武器効率が同等となるので兵力数で勝敗が決まります。模倣、追随、二番手作戦などをミートと呼んでいます。
このほか第二法則的な総合的な戦い方「誘導戦(先手必勝のおびき出し作戦、新たな需要の創造)」、「確率戦(競合数の多い競争を重視、フルラインの品揃え、自社系列内競合など自社の力を重複化させる)」、「広域戦(地域や領域を限定せず拡大していく)」「遠隔戦(間接販売会社の力を活用、広告などの情報発信で顧客に接近する前に勝敗をつける)」、「総合主義(総合力で戦うこと)」が強者の戦略です。
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