TOCの基本的な考え方は、企業共通の目的である、現在から将来にわたって儲け続けるために、それを妨げる制約条件(Constraints)に注目し、改善を進めることによって企業業績に急速な改善をもたらす手法です。
TOCの開発者であるゴールドラット博士は、工場の生産性はボトルネック工程の能力以上は絶対に向上しないという至極当たり前の原理を提唱しました。工場の生産性を上げるためにボトルネック工程に同期させる生産を行い、資材調達もボトルネック工程に同期させるようにした結果、生産性が飛躍的に高まり、仕掛かり在庫や製品在庫が劇的に減少することを実証し、それをTOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)と名付けました。
その後、TOCはその考え方を企業活動全体に広げ、制約条件こそが企業収益を握る鍵であるととらえ、企業内外のさまざまな活動を制約条件に着目して分析することが重要であると主張したのです。その結果、TOCは工場内の改善から企業全体の収益を最大にする経営革新手法に発展しさらに今日では大規模サプライチェーンのコントロールや営業・マーケティングの領域をもカバーする統合手法となっています。
TOCの最大の特徴は、制約条件こそが、企業のアウトプット(利益)を増やす鍵と考えることです。工場の全工程、あるいは全社を挙げてさまざまな改善活動に取り組む従来の革新活動との最大の違いはここにあるのです。TOCでは、企業の活動全体もしくはサプライチェーン全体を1本の鎖に例えて考えています。
この場合「受注 → 原材料入手 → 生産 → 納入 → 請求 → 入金」という、最終的にお金が企業に入ってくるまでの個々の活動は鎖の輪の1つ1つに相当し、企業やサプライチェーン全体の収益力は鎖全体の強度としてとらえることができます。鎖の輪の中に1つだけ弱いものがあれば鎖全体の強度はその弱い輪の強度と等しくなります。
鎖を切れにくくするには、最も弱い輪を探してそれを強化すればよく、それ以外の輪の強度を高めても鎖の強度は増しません。これと同様に、企業やサプライチェーンの生み出す利益は、最も能力の低い活動の制約を受けるのです。利益を増やすには最も能力の低い活動を強化すべきでそれ以外の活動をいくら強化しても利益には貢献しません。この最も能力の低い活動に当たるのが「制約条件」なのです。
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