工場の生産性とは?

近年「生産性」という言葉は、人手不足や長時間労働への課題意識が高まる中で注目されるようになっています。また安倍内閣が打ち出した「働き方改革」でも「労働生産性の向上」は急務とされています。

しかし「生産性」「労働生産性」「付加価値生産性」などという言葉の意味を正しく理解されている方はどのくらいいるでしょうか。また世界の主要国の中で「日本の労働生産性は低い」と言われていますが、企業の労働生産性と、国際社会として見る労働生産性は少し違う意味であることを知っておく必要があります。 

1.「生産性」とは、投入資源と産出の比率

投入した資源に対して産出の割合が大きいほど、生産性が高いということになります。つまり労働生産性とは「産出(労働の成果)」を「労働量(投入量)」で 割ったもの、言い換えれば「労働者1人あたりが生み出す成果」あるいは「労働者が1時間で生み出す成果」の指標です。労働生産性には以下の 2つの種類があります。


(1)物的労働生産性

 「産出」の対象を「生産量」「販売金額」として置いたもの。

   物的労働生産性=生産量(売上額)/労働量

(2)付加価値労働生 産性

「産出」の対象を「付加価値額」として置いたもの。

  付加価値労働生産性=付加価値額(売上額ー外部購入額)/労働量

付加価値額とは企業が新たに生み出した金額的な価値を指すと考えます。

  付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費=売上額ー外部購入額

GDP(国内総生産)から計算される「労働生産性」 国際社会としての「日本の労働生産性」はGDP(国内総生産)から計算されます。

  労働生産性=GDP/就業者数または(就業者数×労働時間)

として計算されており、その結果で「1人あたりGDP」と言うことを表しています。

「日本の労働生産性」が低いというのは、この考え方を基準として言われている のです。ちなみに、日本の労働生産性は、OECD加盟35カ国の中でみると20位です。そして、統計で遡れる1970年以来、主要先進7カ国の中では最下位の状況が続いています。


2.企業が労働生産性を上げるためのポイント

企業における労働生産性の向上は、収益性の向上に直結する重要な指標です。生産性の低い企業でみられる共通点として、仕事の単価が低く、粗利が出にくい構造になっています。下の図を見てください。 かつてのパソコン業界では、加工・組立工場では利益率が低い(付加価値が低い)という傾向があり、下請け体質から抜け出すためには、単なる加工・組立だけでなく事業を上流あるいは下流に拡大して、付加価値業務を増大させ、利益を確保するとする、いわゆる「スマイルカーブ」の考え方を台湾エイサーのスタン・シー会長が提唱しました。

日本の製造業の現状は、国際的には、自動車、産業機械、部品・材料などで高い技術力に支えられて利益を上げています。中小企業においても、独自の技術により、ニッチな市場でオンリーワンの地位を確立している企業は高い利益率を上げています。つまり、製品が高く売れれば、一人当たりの付加価値額が増え労働生産性は高くなります。

では、一般的な受注型中小製造業では、労働生産性を高くするにはどうしたらいいでしょうか?「残業をなくす」「人を減らす」「経費を削減する」これらは一時的には効果があるでしょう。しかし本質対策ではありませんね。


3.利益を上げるための方策

利益を上げるための方策は

 ①売り上げを増やす

 ②人件費を減らす(最低でも現状維持)

 ③社内費用を減らす

 ④外部購入費(外注含む)を減らす

 ⑤付加価値の高い仕事を受注する

生産性を向上させて利益を上げるには、①~⑤の対策を工場として総合的に実施することになります。ここで注意しなければならないのは、工場の利益は、人員を増やさず、いかに短期間に仕事をこなし、売り上げるかに掛かっています。 

業務効率化だけ行っても、その分仕事が増えなければ、余った人員を減らさねばなりません。近年の日本経済低迷を生み出しているリストラによる固定費削減は、社員のモラル低下と売り上げ・利益の低下をもたらすだけです。効率化し生産能力を増やした分、外注生産を内製化すると同時に受注を増やすか、より付加価値の高い(単価の高い)製品を受注する必要があります。


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