官能検査(かんのうけんさ)とは、人間の感覚(五感:視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚など)を用いて製品の品質を判定する検査のこと。工業製品をはじめ、食品、香料などの検査方法として用いられます。
1.官能検査の概要
人間の感覚に依存する官能検査は、メッキや塗装の光沢、色つや、表面傷表面の粗さ、音質などの品質特性を、感覚で判定基準と対比して合否を判定する検査方法です。以下は、官能検査の対象となる検査の種類です。
・外装部品、機構部品の目視検査
・透過部品の透過検査
・部品の搭載されている基板の目視検査
・音響機器の聴感検査
・可動部品(スイッチ等)の触感検査
官能検査は、人間の感覚に頼って検査を行うため、検査する人の違いや同じ検査員でも、検査場所の環境の違いや、その日の体調によって合否判定にバラツキが発生します。官能検査は、判定基準が曖昧であるという弱点はある反面、多種多様な異常を検知することが可能であるという強みもあります。
このバラツキを最小限に抑え、精度を向上していくことが官能検査を実施していくうえでの重要なポイントとなります。官能検査のばらつきの要因として
・検査員による個人差
・繰り返し検査継続による再現性低下
・サンプルに対する慣れ、疲労の発生
これら諸問題を解決し、検査結果の客観性を高めるために、データの取り方や結果の取り扱い(データ処理、統計手法の開発、解析など)などの方法について多くの検討がなされています。
2.官能検査の精度向上
官能検査の精度を向上するためには、次のようなことに留意する必要があります。
(1)検査見本を整備する
合否の判定基準となる「限度見本」を整備し、合否の判定に迷った時は、検査品と限度見本とを比較して判定します。そのため、合格限度見本と不合格限度見本の両方を準備し、検査精度を向上させます。
(2)検査環境の整備
官能検査の検査精度は検査環境によって左右されます。何を検査するかによっても環境の整備の仕方が変わってきます。検査精度を向上するために、何を整備するかを標準化していくことが必要です。 ・表面傷の検査:<視>昼間照明、局部照明、色、方向など
・食品:<視・臭・触・味>昼間照明、無臭、恒温、恒湿、無騒音
・オーディオ:<聴>無騒音、防音、残響、一定音圧、恒温、高湿
(3)検査作業の標準化と教育
検査精度を維持するためには、疲労による検査能力の低下を避ける必要があります。そのためには、検査手順、検査方法などの検査作業の標準化を図るとともに、連続して行う場合検査時間の上限を設定することも必要です。(最大90分程度)
また、監督者は検査担当者とともに合否判定結果を、現物を持って検証し、誤判定があった場合には、なぜ誤判定になったかを検討するなど、検査担当の教育を継続していくことも重要です。
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