QCサークル活動(小集団活動)は、多くの企業が形骸化に悩んでいます。 形骸化の理由は一体何でしょうか?またあるべき姿とは何でしょうか? そして、厳しい経営環境下で職場の小集団活動は本当に必要でしょうか?
多くの工場では、多品種少量、受注生産で忙しい状態が常態化しています。
活動の中心となっている中堅社員は、毎日が忙しく業務と離れた、まったく別のQCストーリー作りをしている暇はありません。そんな中で、職場の改善活動のあり方が問われています。
1.形骸化の理由
工場の改善活動の形骸化の理由を上げてみると活動する側、活動させる側のいくつかの問題点が見えてきます。
①忙しいので、どうしても日常業務を優先してしまう。
②権限がない、業務範囲外などできない理由を上げ活動に消極的
③毎回テーマがマンネリ化して、対処療法的な改善しか実施しない
④会社として活動の目標がないため自己満足の目標を設定する
⑤発表に向けたQCストリー作りに頭を悩ませている
⑥管理層は自主活動として、小集団に全てをゆだねてしまい無関心
などです。
ここで、いわゆるボトムアップの小集団活動の限界が見えています。中堅社員層の教育、意識付けと共に、トップ層、管理層が担うべき役割も大きいことも理解する必要があります。
2.改善活動は中小企業の生き残り策
では、改善活動は中小企業にとってどのように位置づけたらよいでしょうか?
(1) 企業が倒産すれば,みんなが困る
(2) 市場の要求の高付加価値化を追求せざるを得ない(QCDの圧迫)
(3) チャレンジしなければ道は開けない(飛躍的な生産性向上)
(4) オンリーワン技術・技能が必要である
(5) ニッチな市場でのイノベーションを実現する(アイデアと工夫)
人材の成長によって、職場が変わり、組織が変わり、会社が変わらなければ中小企業は生き残れません。そのためには、現状に甘んじ、改善を怠れば、世の中の進歩の流れから取り残されてしまいます。
3.小野道風 柳と蛙の逸話
小野 道風(おの の みちかぜ/とうふう)は、平安時代前期から中期にかけての貴族・能書家。ある時期、道風は、自分の才能のなさに自己嫌悪に陥り、書道をやめようかと真剣に悩んでいる程のスランプに陥っていました。
そんな時、ある雨の日に散歩に出たら柳に蛙が飛びつこうと、何度も挑戦している姿を見ました。その時、東風が思ったことは「なんと愚かな蛙だ。いくら飛んでも柳に飛びつけるわけない」とバカにしながらもその様子を観察していました。
すると偶然にも強い風が吹きだし、柳の枝がしなり、蛙は見事に飛び移れたのを見て道風はハッとしました。「愚かなのは自分のほうだ。蛙は一生懸命努力をして偶然を自分のものとしたのに、自分はそれほどの努力をしていなかった」と悟ったそうです。 それから血のにじむような努力をして今では『書道の神』として有名になったと言うことです。
真剣にやってみることはとても大切なことです。もうダメだとあきらめる前に何回もチャレンジして、もうひと頑張りしてみると、未来が開けるかもしれないという例えです。
4.本来あるべきボトムアップ活動とは
「本来あるべきボトムアップ活動」とは、この攻めの活動によって経営成果を得るために、試行錯誤を繰り返し、あのカエルの様に何度でも困難な課題に挑戦する活動のことです。この活動は、決してQCストーリー通り進むものではなく、失敗の連続となるはずです。
さて現在の製造業の置かれた厳しい環境を生き抜いていくには、活動のレベルをアップさせ、守りの活動から、攻めの活動に引き上げていく必要があります。レベル3の狙いは、経営成果の得られる活動であり、範囲も全社に拡大されます。
各階層の役割トップは方針を示し、企業の将来像を明示する必要があります。特に、自社のオンリーワンの技術は何か?技術を高めるためには何が必要で、何が不足しているのか、そのためには何をなすべきかを明らかにする必要があります。
管理層は、自主活動にゆだねることなく、積極的に関与し、支援を行っていく必要があります。実際の活動の中心となる中間層は、「プロ人材」として自立し、課題解決に向かって積極的な行動をとることが重要です。個人が成長し、組織が活性化し、会社が良くなる・・・これがQCサークル活動の理想の姿です。
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