製造工場の5Sは、効率化、現場従事者の規律強化、経費削減、安全管理などの効果が期待されている。 しかし、5Sに取り組んではいるが、現場が綺麗になっていない、規律も守られていないなどの工場も見受けられる。
疑問を持ちながらもこのような5S活動を継続させている企業も多い。では、なぜ効果が得られないのだろうか?
5Sが定着しない理由の1つが目的が不明確になっていることがあげられる。機械加工工場と食品工場では明らかに目的は異なる。
機械加工工業5Sの目的は効率化、現場従事者の規律強化、経費削減、安全管理などであるのに対し、食品工場の目的は綺麗で衛生的な環境を保つことである。目的について深く考えられていなかったり、また最近の工場では経費削減、人員削減などのため、人員が安定せず、教育訓練もままならない状態となっている、など5Sの運用が思い通り行かなくなる。
大半の従事者は、その目的や意味、必要性を理解していないことが多い。「5Sをやるぞ」という意気込みがある者と「5Sをやりたくない」者はいずれも少数であり、大半の従業員は周りに流されている。そのため、少数のルール違反や例外を許していると5Sをしない状態に逆戻りしてしまう。
たとえ社長であっても、ルール違反を叱責できる会社としての取り組みや雰囲気づくりも5S成功のためには重要である。 このように「躾」は1つのSでありながら、非常に重要であり、品質や生産性にも影響するため、大きな役割を担っている。
5S基準は5Sの目的と、達成レベルをどこに置くかで、管理基準が決まって来る。(在庫金額、不良率、労働生産性などを数値化し、見える化する)
・製品や仕掛品の置場や数量(在庫を減らす、一定数に保つ)
・異物や不良品の混入を防ぐ(清掃の頻度、不良品の識別方法)
・作業時間の短縮(治工具の置場管理、部品材料の取り揃え方法)
5Sのために何時間、時間をかけているか?もし毎日、30分、5Sのために全員が時間を取っているとすると、0.5H×30人×22日=330時間/月かけていることになる。時給1500円とすると330時間×1500円=495000円/月、年間に換算すると594万円になる。経営者として、594万円掛けた効果をどう評価しているのか? 工場がきれいになった、仕事がやり易くなった、お客様にほめて頂いたなどもちろん無形の効果はあるが、経営効果として具体的に何を期待しているかを明確にしなければならない。
経営効果が分からなければ、5Sを毎日行っている従業員は負担ばかりで、利益に貢献しているのか、それが自分の業績にどう跳ね返ってくるのかもわからない。そういう見方で5Sの効果を考えてみると
整理:不要なものを捨てる、仕掛在庫をなくすことによって資金の回転が良くなる。
整頓:モノを取り出しやすくする、工具を探す時間が短縮するなど生産性がアップする。
清掃:機械設備や治工具を清掃することで、故障を未然に発見できチョコ停が減る。
など、それぞれ生産性の向上や、リードタイム短縮に直結している。この指標を全員に見える化して、5S改善を行うことにより、目標に向かって改善が進んでいることが明確になる。貢献度によって評価にも反映することで、従業員のモラールアップにもつながってくる。
5S運用ルールについては、PDCAが回るようにします。
計画:目的を踏まえ、管理する項目、確認頻度、担当を決める、教育実施の内容、頻度、担当を決める
運用:誰が、いつ、何を(5W1H)を明確にする。うまくいかない項目は、原因調査と対策を実施する
検証:毎月、毎期、毎年の単位で目的を達成したか、基準に到達したかについてレビューし検証する。結果を次の計画に反映させる。
品質管理手法の間違った運用は、効果が得られないどころか、形骸化し、実際の業務に於いても虚偽の報告やデーターのねつ造問題に発展し、企業の信頼を失墜しかねない。目的と効果を正しく理解し、何事にも限界があることも見極めながら行動する姿勢が重要なのである。
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