DRBFMはデザインレビューのツールか?FMEAとDRBFMの違いとは?
顧客視点の品質および製品の信頼性・安全性を支える3つの仕組みとは?
「ボトムアップ型設計」「新規点・変更点に着目」「過去事例のナレッジ化による水平展開」など、トヨタ式DRBFMの考え方、進め方について詳しく解説します。
1.FMEAとは
FMEAは製品設計の信頼性(安全性)対策が万全かどうかを評価する手段です。そのために「部品やコンポーネントの故障モード」の概念を用いたボトムアップの解析を行います。その際に、市場で発生する問題に「気付く」ことが必要となりますが、設計者個人の持っている知識や経験には限界があるため、信頼性設計の漏れや欠落を 防ぐ目的で、FMEAレビューを実施します。
2.DRBFMとは
DRBFMとは、設計者が新規点・変更点に着目し、その中で心配点をしっかり洗い出して、対策を考えた上、有識者、専門家を交え、デザインレビューを実施します。 その時、他に心配点は無いか、多くの知見から、対策に漏れがないかどうかを検証し、未然防止を図る手法です。
(出典:トヨタ自動車75年史のホームページより)
この表は、トヨタのDRBFMフォーマットです。
青色の項目は、設計者が記入し、黄色の項目はレビュー時、ディスカッション
を重ね、追加項目があれば記入します。では、「心配事」とは何か、「変更がもたらす機能の喪失、商品性の欠如」とはいったい何でしょうか。
FMEAは、設計変更を行った際、二次障害(設計ミスや漏れ)洗い出すためのツールではなく、故障モードを基に、その影響解析を行うことが目的です。この基本的な考え方は変えてはいけません。
ではわかりやすく事例を用いて 説明します。機能の喪失とは、例えば、エンジンが掛からない、ブレーキが利かないなど装置の故障の種類を意味しています。故障の原因を解析するのは、従来から行われているトップダウンの解析手法で、例えばFTAを用いて解析します。 FMEAは、原因解析のためには使いません。
例えば、材質を変更したため、錆が出やすくなるという心配があるとします。では、その錆は、どんな使用シーンのとき起きやすく、どのような影響が出るかを考えます。 故障モード「錆」ですが、心配点としては、「もし錆が発生した場合、その部品はいづれもろくなって破損するだろう。その時、製品にどのような影響を及ぼすだろうか」と考えます。
錆がどのようなプロセスで発生し、それが製品の故障に発展し、事故につながる恐れがある、というように、一連の流れの中で、心配点を抽出する必要があるのです。 これには、経験と知識が必要となり、有識者を交えたディスカッションが欠かせないのです。
3.FMEAとの決定的な違いは何か?
FMEAは、すべての故障モードを列挙し、その発生原因を取り除く、または緩和する対策を講ずることを基本としています。しかし、すべての部品、コンポーネントの故障モードを列挙すること、そしてその原因と対策を網羅的にリストアップすることは実際上は困難な作業です。例えば、「錆の原因」は様々であり環境条件、使用条件によって無限に挙げることができます。この作業を一つ一つ設計者が検討し対策する事は不可能に近いことになります。
しかし、DRBFMでは、新規点・変更点における「故障モード」を意識した 「心配点」を抽出し、更にデザインレビュー実施により漏れを防ぐことに重点を置いています。つまり、故障モードを含む心配点のリストアップであって、故障モード単独 のリストアップではないということです。
当研究所が推奨する実践的FMEAは、トヨタ式DRBFMを、より具体的な手順に落とし込み実施するための様々なツールを準備しています。 まず設計者によって、心配点の抽出を行う際には、「新規点変更点リスト 作成」と、「セルフFMEA」の実施が必要となります。そしてデザインレビュー時にレビューアーが実施する「FMEAレビュー」 と「簡易評価法」による評価です。
このフローは、従来からの設計フローに、DRBFMを組み込んだ場合の
手順を示しています。具体設計プロセスにおいては、新規・アレンジ設計部分に対して、起こしてはならない故障・事故の対策を行います。
設計ノウハウ集、シミュレーション・リスクアセスメント・などの信頼性設計プロセスと新規点・変更点リスト作成により、心配される故障モード、故障、事故の想定を行います。
次に、セルフFMEAプロセスでは、変更点・新規点でリストアップした故障モード、故障の原因の対策を行い市場に流出した場合のリスク評価を行います。 故障モード一覧表、故障モード抽出表は、使用シーン、故障モード、故障発生に気づくためのツールとして非常に有効なツールとなります。設計者は、セルフFMEAを実施した後、結果をまとめ評価シートを作成しFMEAレビューのインプット資料として準備します。
FMEAレビュープロセスでは、セルフFMEAの結果を基に、レビュアーによる抜け漏れ確認(デザインレビュー)を実施します。
メンバーの選定・・・技術、営業、工場、保守部門など
レビュー実施・・・信頼性、安全性設計の妥当性確認、抜け漏れ等発見された場合は、設計へフィードバックを行う
以上により、DRBFMは終了とし、FMEAシートを完成させます。最後に、企業としてこの製品の市場投入可否判断を行います。 以上が、DRBFMの実施手順の詳細です。
解説の中で述べた、各種ツールの詳細は、別途解説書をお求め頂き、理解を深めて頂くようお願いします。
当研究所では、トヨタ式DRBFMをベースとして、小規模設計チームにも使いこなすことが可能となるよう、各種ツールの提案を行っています。
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