中小企業の組織のあり方、組織が成り立つための3要素とは何かについて考えてみます。
1.個人商店経営から、組織経営へ
個人商店から、一人前の企業へ脱皮するには、組織の力を生かした仕事のやり方に変えて行かなければなりません。アメリカ合衆国の電話会社の社長であり、経営学者であるチェスターバーナードが提唱している組織の3要素は以下の項目です。
•共通の目的をもっていること(組織目的)
•お互いに協力する意思をもっていること(貢献意欲)
•円滑なコミュニケーションが取れること(情報共有)
これらの3つがそろって始めて組織が成立するというのです。集団は人が集まっただけであり、組織は3つの要素を満たす人の集まりです。そして、3つの要素がバランスよく存在すれば「組織」は成立すると主張しています。
日本の戦後の経済発展は、日本人の協力する意欲、コミュニケーションがとりやすい環境、目的を共有しやすい性格などから、驚異的なスピードで経済発展を遂げましたが、それらの3つをがっちりと高いレベルで維持することができれば本当に組織は、目的や目標に到達することができるのでしょうか?
実は、そう簡単にはいかないのが組織のむずかしいところです。最もポピュラーな「ライン組織」は、官僚組織とも言われ、高度に機能的で効率的な組織であるの反面、画一的な考え方や組織内の空気による意思決定などによって、行動や考えが硬直化しやすいのです。画一的なルーチンワークはうまくこなせるが、流動的な環境下で、素早い判断が必要な業務には向いていません。
『失敗の本質』という本で、旧日本軍の組織内のコミュニケーションや意思決定の仕方が官僚制組織の失敗を招いた背景を追究した、組織論研究の最高傑作です。急激な環境の変化には、意思決定の階層が深い組織では、時間が掛かり過ぎるまた、責任が曖昧になる、合理的な判断よりも義理人情を重視した意思決定を行ってしまうことがあるのです。
イノベーションを興すには、環境の変化に追いついていける組織が必要です。イノベーションがおきにくくなってしまった企業には、すくなからず旧日本軍とおなじような組織の硬直化が見られるはずです。 実は大企業や役所だけでなく中小企業の小さな組織でも、硬直化が見られます。
様々な理由があるでしょうが、そんな時は、バーナードの古典的経営学を振り返ってみることが求められます。
(1)共通の目的をもっていること(組織目的)
これは、経営者が具体的に社員に「経営理念」「経営計画」の中で明確にする、社員のあるべき姿、企業にとって必要な人材像を明確にする、部門(部、課、係)の役割を明確にする
(2)お互いに協力する意思をもっていること(貢献意欲)
担当業務の目的、目標、達成度、成果の評価基準が明確になっている、組織の中の各担当者、役職者の役割分担、権限が明確になっている、評価制度(人事制度)と教育制度の連携が取られ、見える化されている、結果に報いる評価と報酬制度が充実している
(3)円滑なコミュニケーションが取れること(情報共有)
情報共有の場を積極的に設けることが必要(小人数の朝会は有効)、本音を引き出す非公式のコミュニケーションの場は重要(ランチミーティング)、報連相が活発になる条件は、管理層が効く耳を持つこと
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