従来、日本の品質管理の考え方は、小さなカイゼンを繰り返すボトムアップ活動で、優れた製品を生み出して顧客満足を得てきました。その製造工程のカイゼンと同様に、設計工程においても、問題が発生すると小カイゼンを繰り返し、不良を外に流出させないという流出防止の考え方が基本になっています。
この品質管理の手法は、発生した不具合に対する原因追求・対策型であり、また、あらかじめ設定した社内基準を合格すれば良しとする検査型、認定型の手法であるため、工程で顕在化しない不具合は抽出することが困難となっています。
そこで設計のやり方の発想を転換し、評価や検査での認定(validation)ではなく、査定(assessment)の考え方に切り替え、設計開発のスピードアップと市場での想定外のトラブルの未然防止を図って行くことが求められるようになってきました。
査定(アセスメント)とは、実際の製品を対象とした評価結果、検査結果などの証拠に基づく合否判定を行うのではなく、製品を作る前の設計段階で、対象の実力や価値を見極め、影響を定量化しようとするもので、この事により漏れなく不具合を洗い出すことが可能となり、設計開発のスピードアップと、市場における想定外の重大事故の発生を防ぐことが可能
なります。
市場の不具合を予測し、あらゆる条件を短期間で確認する効率的、効果的な手段を用いて未然防止を行う方法論を採用しなければなりませんが、そこには多くの誤解を生んでいるのも事実です。
未然防止策とは、再発防止策と考え方が全く異なります。不具合事象から原因を追究して上流工程へフィードバックしていく方法は、次の新しい製品で似たような不具合を防ぐことは可能です。しかし全く経験のない未知の不具合は対応できません。未知の不具合を見つけ、対策するには、設計システム全体および設計者自身も、原因追求型の「守り」の設計品質改善から未然防止型の「攻め」の設計品質改善の考え方へ発想の転換が求められています。
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