慢性不良対策(事例研究)

慢性的な品質不良は、長期間に渡って発生し続ける不良であり、致命的ではないが、不良として工程内で選別処理されており、大きな問題にはならないがゆえに放置されがちな不良です。

ただ積もり積もって企業にとって多大な損失(品質ロス・コスト)を招いていることが多く、実は経営を圧迫しかねない問題なのです。慢性不良は、例えば材料を含む製造上のばらつきがある程度大きく、工程能力が低い状態で発生します。また近年の商品開発の短期化、小ロット多品種生産のもとで、設計マージンの十分取られていない製品が量産化され、量産ロットも小さいために、不良対策が後手後手に回ってしまうケースも多くなっています。


従って、慢性不良を解決するには、一担当技術者の範囲では難しく、全社ぐるみのプロジェクトを組んで解決に当たらなければなりません。慢性不良がなくならない理由の1つとして、小集団活動や技術者個人の取り組みは限界に来ていることを示しています。


事例研究

製造業における慢性不良対策の状況を見てみましょう。ある自動車部品加工メーカーの流出不良に悩む工程の検査員から届いた質問ですが、一検査員としてどのような行動を取ったら良いか?考えてみましょう。

(質問)

私は、車関係のベアリングシールを作っている会社に勤めています。

製造工程は、①ゴムシールを機械で型抜き→②検査→③加硫→④最終検査です。私は②の打ち抜き後の出荷検査にいます。流失する不良は

 ●打ち抜き機械の不具合による不良 カケ・バリ・打こん傷等

 ●打ち抜き機械の動作不良による不良、主に形状不良で、二度打ち、逆打ちなど

不良流失の数字は管理職が管理しており、3~4件/月が実態です。

検査方法は目視検査を行っており、だいたい1束100枚結束の芯金をバーに通しての「流し検査」ですが、不良を全て摘出するのには無理があります。やはり企業は効率を求めているからです。

機械の側の対策も会社としてプロジェクトを組んで 原因を調べていますが、3年かかっても真の原因究明には至っていないと思います。

このような場合、流出を防ぐには、どうすればいいでしょうか? 


(回答)

検査ではじいても、月に4,5件流出不良を出しているということは検査の見逃しがあるわけですね。(ヒューマンエラー)検査で見逃しを防ぐためには、検査員を増やして今より時間を掛けて検査する、あるいは自動検査機を入れる、です。

不良発生源を絶つには、機械のメンテナンスの方法改善、機械がだめなら新しい性能の良い機械に買い替える、が一般的な回答です。

しかし、その対策が根本的に打てないので、現状の状態が続いているのだと思います。(問題放置)でも現状に対して、一検査員として危機感を抱いていると言うことですね。


上層部もある程度分かってはいると思いますが、忙しい毎日の仕事の中でなかなか手が付けられないと言った状況でしょうか?(問題放置)最近検査のデータねつ造問題が起きています。

これも似たようなもので、企業の上層部もある程度現場の状況は把握しているが、何も手を打たず、仕方なしに現場担当者がデータをねつ造するしか手が無くなっているのだと思います。「だいたい1束100枚結束の芯金をバーに通しての「流し検査」です 」とは、本来全数検査すべきところ、事情があって、このような方法を取らざるを得ないのと、データのねつ造は同じだと思います。(問題放置)

他の例でも、現場からの疑問の声や、このやり方では問題があるという訴えもなかったのだと思います。検査を担当している立場で、このような訴えを上司にして、改善するにはどうしたらいいか話し合うことが必要です。(ホウレンソウ)朝礼などの職場のコミュニケーションの場を利用する、あるいは、休み時間に雑談の中で話題にしてみるなど、工夫してアピールすることが必要と思います。

あなたが、きっかけを作らないとだれも声を上げないでしょう。自分の仕事に誇りを持ち、検査員として自立するには、自らの責任で動くことが必要ではないでしょうか?厳しいことをあえて言うと、このまま放置することは、仕事に対する責任放棄です。

自ら工夫して、より検出力の高い検査方法を見つけることも要です。


現場の検査担当者として、できることは限られます。多くの場合、問題と感じていても行動に移せないというのが実態ではないでしょうか?

 ・忙しいから

 ・自分の担当ではないから

 ・自分だけでは解決することができないから

などと諦めてしまい、ずっとそのままになって「報連相」も行われなくなってしまいます。 実はこのことが、慢性不良が減らない一番の原因ではないでしょうか。担当者の役割の自覚と、改善への意識付けは重要な事ですが、管理者はそれをフォローする役割を担っています。 若手社員、中核人材の力を100%発揮できる環境づくり、活躍の場を広げていくための仕掛けづくりがトップ層をはじめ現場管理者に求められています。

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